肺がんは、日本においてがんによる死亡数が最も多いがんです。がん全体の中でも罹患数・死亡数ともに上位を占め、毎年多くの方が新たに肺がんと診断されています。
部位別にみたがん死亡数では、肺がんは男女ともに上位を占めており、日本における重要ながん疾患の一つです。一方で、近年は検診やCT検査の普及により、症状が出る前の段階で発見される肺がんも増えてきています。
肺がんの基本統計と特徴(日本における状況)
他のがん種と比べた頻度
肺がんは、日本で最も死亡数が多いがんであり、がんによる死亡全体のおよそ5人に1人前後を占めています。また、年間約12万人前後が新たに肺がんと診断されています。(出典:国立がん研究センター がん情報サービス)
年齢と性別
肺がんは中高年以降に多く発症する病気で、とくに60~70歳以上の方で診断されることが多くなります。男性の罹患数は女性より多い傾向が続いていますが、近年は女性の肺がんも増加しています。
部位別がん死亡数
部位別にみたがん死亡数では、肺がんは男性・女性ともに最も多い部位です。進行すると転移をきたしやすく、全身状態への影響も大きくなるため、死亡数に大きく寄与しています。
肺がんの種類と進行度(TNM分類・Stage)
肺がんは、大きく非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つに分けられます。非小細胞肺がんは肺がん全体の大部分を占め、手術を含む治療の対象となることが多いタイプです。
肺がんの進行度は、TNM分類という国際的な基準で評価されます。
- T(Tumor):がんの大きさや周囲への広がり
- N(Node):リンパ節転移の有無
- M(Metastasis):遠隔転移の有無
これらを組み合わせて病期(Stage 0~IV)に分類されます。
- Stage I:がんが肺の中にとどまっている早期
- Stage II~III:リンパ節転移や局所進行を伴う状態
- Stage IV:他の臓器への転移を認める状態
一般に、早期に発見されるほど治療成績は良好であり、進行例であっても近年は集学的治療により予後改善が期待できる症例が増えています。
肺がん治療の基本的な考え方
肺がんの治療は、病期(Stage)、がんの性質、患者さんの年齢や全身状態を総合的に判断して決定されます。
肺がんの進行度は、TNM分類という国際的な基準で評価されます。
- 手術療法:早期肺がんでは最も根治性の高い治療法
- 薬物療法:抗がん剤治療、分子標的治療、免疫療法など
- 放射線療法:手術が適さない場合や薬物療法と組み合わせて行われる治療法
肺がんの手術
肺がんに対する手術適応の考え方
肺がんに対する手術は、主にStage I~IIIの比較的局所にとどまる肺がんで、全身状態が手術に耐えられる場合に検討されます。
また、Stage III~IV期の進行肺がんであっても、術前に化学療法や放射線療法を行ったうえで、根治性を高める目的で拡大手術が検討されることがあります。
肺の切除範囲と主な手術方法
肺は、右肺が3つ、左肺が2つの肺葉に分かれ、さらに区域、亜区域へと細かく分かれています。
肺がん手術では、がんのある肺葉と周囲のリンパ節を切除する肺葉切除術が標準治療です。
近年は、小型肺がんに対して部分切除、区域切除、亜区域切除といった縮小手術も検討されるようになっています。
当院では、腫瘍の位置や性質、患者さんの状態を総合的に判断し、区域切除や亜区域切除まで含めて慎重に適応を検討しています。
また、位置同定が難しい小型肺がんに対しては、RFID技術を応用した極小ICタグ「シュアファインド®」を用いるなど、安全性と根治性を高める工夫を行っています。
手術の方法(アプローチ)
肺がん手術の方法は、がんの大きさや位置、進行度、患者さんの状態に応じて選択されます。
- 開胸手術:進行肺がんや拡大手術が必要な症例で選択
- 胸腔鏡手術(VATS):傷が小さく回復が早い低侵襲手術
- 単孔式胸腔鏡手術:さらに体への負担を抑えた手術方法
- ロボット支援下手術(RATS):高精細視野と精密操作が可能
当院では、低侵襲性と根治性のバランスを重視し、患者さんに最適な手術アプローチを選択しています。
福岡大学における肺がん手術治療の特徴と実績
福岡大学では、呼吸器内科、放射線科、病理部門などと連携したチーム医療のもとで肺がん治療を行っています。
実績の詳細は診療実績についてをご覧ください。
患者さんへ
肺がんは、早期発見と適切な治療により、治癒や長期生存が期待できる時代になっています。
検診で異常を指摘された方や、肺がんについて詳しく知りたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
肺がんについてのQ&A
- どのような肺がんの方に外科治療が行われているのでしょうか?
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基本的には、肺がんが血流にのって流れ出し、肺以外の場所に転移していない方が対象となります。ただし、例外的に最近では遠隔転移のうち脳転移だけの場合はガンマナイフなどを脳に照射した後、肺がんを手術する場合があります。これにより良好な成績を得ている方がおられます。
肺がん周囲から近くのリンパ節までであれば手術で取り除くことができるのでやはり適応されます。しかしかなり遠くまでのリンパ節にたくさん流れ込んでいればむしろ抗がん剤と放射線が選択されます。そして後に手術を再検討することがあります。
- 肺がんはどれくらいの小さなものまでわかるのでしょうか?
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一般的に撮影される胸部写真では、細胞が密で固まりになっていれば、場所・条件にもよりますが1cm程までなら指摘できると思われます。しかし、細胞があまり少ないと胸部CTでしかわかりません。
- それでは小さなものは、どのように見えるのでしょうか?また、悪性かどうかは写真だけでわかるものでしょうか?
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最近では微少な肺がんも精度の高いCTである程度わかってくるようになりました。だいたい5mm程の肺がんは疑いを持てば診断が可能です。悪性かどうかは、画像だけでも専門医である程度わかると思います。しかし確定には組織採取が必要です。
- どのように確定診断するのでしょうか?
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消化管と同じように肺でも気管支鏡は通常行われる検査です。それにより細胞を採取し確定診断を得ようとします。組織(細胞とその構築を判定)や細胞診(一つ一つの細胞を判定)の形で悪性かどうかを判定します。気管支鏡が入る範囲で可視できれば腫瘍を直接確かめ組織を採取できます。しかし、癌が小さいとなかなかその場所へ気管支鏡がうまく到達できませんので、麻酔をかけてから胸腔鏡などを用いて組織の一部分を切除し、その場で病理医の先生に顕微鏡で診断をしていただくことになります。これを術中病理診断といいます。
最近では、さらに細い枝まで入る極細径気管支鏡や、最新の仮想気管支鏡画像を用いて道しるべを計算し診断率を上げることが可能になってきました。我々の教室では、九州で最も早くvirtual bronchoscopyを購入し使用を始めています。
- 痛みが少なく傷が小さな肺がん手術とは、どんな方法ですか。
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内視鏡手術でも胸部臓器の疾患には胸腔鏡手術、腹部臓器には腹腔鏡手術と言われています。肺がんに対しても取り入れられている手技です。肺を直接見ることはなくカメラを肋骨の間から入れて映し出しモニターを見ながら手術を行います。
- 胸腔鏡手術は、どこでも受けられますか?
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一言に胸腔鏡手術といっても施設間で異なります。その理由は、さまざまな難しい技術があり、本当の胸腔鏡手術ができる人が行っているところは意外と少ないと思います。胸を大きく開けた傷から覗き込みながらカメラを入れて胸腔鏡手術を表示してある施設もよくあるのでよく確かめてください。(傷をみれば本当の胸腔鏡手術かどうかだいたいわかります。)福岡大学は九州で最も早くから本格的な胸腔鏡手術を行っていますので九州、山口など一円から多くの方がこの手術を受けに来院されています。
- 胸腔鏡手術はどのような肺がんの人が受けることができるのでしょうか?
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大きさが約3cm以下で、大きなリンパ節転移がないと考えられる方です。また、過去に肺の手術や結核などで癒着(くっつき)がないことが条件です。これはだいたい手術前の写真で判断できます。
- 肺がん手術方法について知りたいのですが、どれくらい肺をとられるのでしょうか?
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基本的にはガイドライン(治療の基本指針)を参考としていますが、肺のブロック(肺葉)を取ることが原則と思います。最近ではいくつかの条件がそろった微小肺がんは区域切除や楔状切除(肺葉よりさらに小さな解剖学的領域)を行うことで治癒と肺機能を温存することも始まりました。どうしても癌が大きい場合や中枢に存在する際は片方の肺を取る場合もあります。
ただし、工夫を施すことで片方の肺を全て切除することなく何とか残すことができます。これを形成手術といいます。気管支をいったん切り離し、悪い部分だけ除きまた繋ぎ合わせる気管支形成術や血管を切り離し同様にまた継ぎ合わせること(血管形成術)もできます。高い技術が必要とされます(どこでも行っているわけではありません)。他の病院で難しいと判断されたケースも紹介を受け、治療をしております。私たちはこれらの手技を数多く行っておりますのでご相談下さい。
- 手術を受けたいのですが費用はどの程度必要でしょうか?
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肺がんの手術を受け、3週間入院の場合はだいたい48万~54万円かかります。また、食事代が別途かかります。(1食260円、3週間で約16000円)ただし、70歳未満の多くの方が窓口での負担が軽減される「限度額適用認定証」を申請されますので 自己負担限度額のご負担ですんでいます。下記を参考にして下さい。
- 手術を受ければ確実に治り、他の抗癌剤や放射線療法は受けないで良いのでしょうか?
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全ての方が手術だけで治療を完結するとは限りません。中にはリンパ節転移があったり、どうしても一部残っている可能性がある方は手術が終わってから抗癌剤を追加したり放射線治療を行うことも必要になります。これは少しでも再発率を少なくするための治療と考えられています。詳しいことはお尋ね下さい。
- その他、特別に行っていることがありますか?
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総合的治療体系
福岡大学では毎週月曜に肺がん合同カンファレンスが全ての患者さんを対象に治療方針を決めるため行われています。いわば外科だけではなく総合的な治療を行うため多方面から検討されています。これにより治療連携を密にして、すばやい治療が専門的可能になります。呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科、腫瘍内科、病理部が集まります。
非外科的治療
肺がん切除組織を解析し(EGFR変異,ERCC1発現、その他)、これをもとに分子標的治療や抗がん剤の選択なども手がけています。著明な効果が得られれば外来で長期に分子標的薬を服用し通院されている方もおられます。