RFID

肺手術におけるRFID気管支鏡下マーキング
RFID(Radio Frequency Identification)とは、小型のICタグに記録された固有IDを電波で読み取る非接触識別技術です。
この技術を応用して、肺の小さな病変(結節)の近くの末梢気道内に微小なRFIDタグを留置し、手術中に専用リーダーで病変位置を正確に把握するのが「RFID気管支鏡下マーキング」です。

どんなときに行うの?

肺がん手術では、特に以下のような病変は視診・触診では判別が難しいことがあります。
  • 小型肺結節(10mm前後)
  • すりガラス影(ground-glass nodule)
  • 触知困難な深部病変
  • 部分切除・区域切除など肺を温存する手術を行う場合
そのようなケースで、病変を見失わず、確実に、かつ必要十分なマージンを確保して切除するためにRFIDマーキングが大きな力を発揮します。
RFID
RFID

手技の流れ

気管支鏡でRFIDタグを留置
  • 細い気管支鏡を用いて、病変に最も近い末梢気道へ進みます。
  • 病変そのものには触れず、肺の内部からアプローチするため痛みはありません。
  • 小さなRFIDタグをそっと留置します。
CTで位置を確認
  • タグが正しく置かれているか、安全性を確認します。
手術中にRFIDリーダーで位置を検出
  • 胸腔鏡手術(VATS)のポートから専用リーダーを挿入すると、タグが「ここにあります」と教えてくれる仕組みです。
  • 位置は数ミリ単位で把握できるため、確実で安全な切除が可能になります。

RFIDマーキングのメリット

安全性が高い(肺癌の播種・空気塞栓の心配がありません)

従来の CTガイド下経皮マーキング(針で皮膚から肺に刺す方法)では、
  • 肺癌細胞が胸腔内に撒かれる播種(針孔播種)
  • 血管に空気が入りこむ空気塞栓
  • 気胸・肺出血
などの稀ではあるものの重要な合併症が報告されています。
一方、RFIDマーキングは“気管支鏡から肺内部へアプローチ”するため肺を外側から刺すことがありません。
  • 針孔播種や空気塞栓が起こらない安全な方法です。
  • 気胸・肺出血のリスクも非常に低いのが特徴です。

病変の正確な位置が3Dでわかる

タグと病変の距離を立体的に把握できるため、深い位置の病変や触れない病変でも確実に切除できます。

肺をできるだけ温存できる

  • 必要以上に大きく切る必要がなくなり、部分切除・区域切除などの縮小手術が行いやすくなる
  • 結果的に肺機能の温存につながります。患者さんの負担が最小限で済みます。

CTガイド下マーキングとの比較

項目 CTガイド下(経皮) RFID気管支鏡下
アプローチ 皮膚から針を刺して肺へ 気管支鏡で肺内部から
播種(針孔播種) ありうる ゼロ
空気塞栓 稀に報告あり なし
気胸 高頻度(10〜20%) ほぼゼロ
適応 比較的表層病変 表層・深部どちらも可
多発病変 不向き RFID複数タグで対応可

当院の実績

  • 合併症は極めて低率
  • 区域切除・部分切除など、肺機能温存手術と相性が非常に良い
  • 深部・微小・すりガラス影病変でも高い同定率

患者さんへのメッセージ

RFID気管支鏡下マーキングは、安全性が高く、肺を温存しながら確実に病変を切除できる最新技術です。
当院では十分な経験のもと、適切な症例に選択して実施しています。
ご不明な点があれば、外来でお気軽にご相談ください。